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2 「鎮守の森 (1)岩屋」(2010.11.15)




 岩屋には、変化に富んだ大小さまざまな岩場があり、太古の昔から受け継いできた素晴らしい自然が残されています。植物相のたいへん豊かな村随一の鎮守の森は、宝珠山村全体の自然が凝縮された象徴的な自然環境となっています。

 信仰の対象としてきたこの一帯は、信仰が栄えるにつれて幾つもの岩山を縫って小道が作られるなど、古来の自然を残しながら控えめに開発されて来ました。また、信仰と関わりの深い樹木や鎮守の森を醸し出す樹木が保存されながら、一つの自然の体系がつくられています。
 
春の訪れを告げるゲンカイツツジの群落
〈県指定天然記念物 昭36・10・20〉



 
イワヒバ 岩松 シダ類 イワヒバ科
 
カタヒバ 片檜葉 シダ類 イワヒバ科

ヒトツバ シダ類 ウラボジ科
 岩(いわ)に生じる檜(ひ)葉(ば)の意味です。湿った岩に着生して乾燥にも強く、北海道からアジアの熱帯地方まで広く分布しています。 薬草 園芸



 名前は、イワヒバに似ているものの枝が片方にしか伸びないことに由来しています。冬季には紅葉しています。 薬草 園芸



 暖地に多く日当たりの良い岩、木、屋根などに自生し、葉は厚みがあって硬く革質、表面には星状毛が密生しています。 薬草 園芸



 
セッコク せきこく ラン科
 
サイゴクイワギボウシ西国岩擬宝珠 ユリ科

カラスビシャク 半夏(はんげ) サトイモ科
 岩上や樹上に着生しています。5〜6月、古い茎上部の節に白色・薄いピンク色の可憐な花を咲かせます。薬草 園芸



 湿った岩、大樹の上で生育します。名はつぼみの形が欄干の擬宝珠に似ていることから。開花は8〜9月です。 山菜 園芸



 3枚の葉と茎の先端の仏炎包がよく目を引きます。仏炎包は人が使うには小さくカラスが使う柄杓に例えての名です。 薬草 園芸







〈県指定天然記念物 昭35・8・5〉
長い年月に渡り荘厳さが漂う大イチョウ
 岩屋には、近年まで自然の状態で生育していた貴重な植物が普通に見られていました。その植物は、ラン科のクマガイソウです。

 しかし、人々の手によって乱獲され、周辺部の開発によって現在では目にすることはできません。また、人の手に届かないこの大イチョウの樹上には、他の寄生植物と共に、シダ植物のアオネカズラの大きな群生があり、冬にイチョウの葉が落ちてしまうと下の写真のように青々とした姿がはっきりと分かります。かなりの年月がないと出来ない大きさで学術的にも大変貴重なアオネカズラの群生です。 




クマガイソウ (熊谷草)  ラン科

アオネカズラ

ハカタシダ
 名は袋状の唇弁を熊谷直実が背負った母衣(ほろ)に例えて。昭和30年代岩屋に生育していた貴重な植物です。 絶滅危惧II類



 青緑色のきれいな根茎が特徴のシダ。大イチョウの樹上の大群生は学術上大変貴重です。葉の両面がビロード状の毛で覆われ、触れる触感がとても心地よい。 



  名の由来は、葉の筋の模様が博多織に似ていて、斑入りは特に強く連想します。写真のように斑入りではないものが多く、大イチョウの根廻に自生しています。





イワタバコ 岩ちしゃ イワタバコ科 


マルバアオダモ  モクセイ科 


ツタ  ブドウ科 
 湿った岩に密生して育ち、葉がタバコの葉に似ています。繁殖力が弱く栽培は困難で、自然保護の立場から是非保護したい植物です。薬草



 日当たりの良い岩場によく生育、岩屋にふさわしい樹木です。4〜5月には本殿の岩場で、開花した純白の花が美しく輝いています。



 秋、本殿後ろの岩肌を這う古く太いツタの紅葉は目を見張るほど鮮やかで美しい。ツタの名の由来は他の植物や岩に「つたって伸びる性質から。 樹液は甘味料






   

  
オオツバキ(福岡県天然記念物指定 昭和36年10月25日)
 とにかく沢山の花が咲きます。咲いた花はやがて次々に落ち、落ちた花は必ず上を向いています。
このオオツバキは、高さが約13.6m、樹周胸高1.8mで、3月初めから4月下旬まで咲き続けます。


オオイチョウと七色の木
平成4年4月1日発行の宝珠山村誌資料(P.91)の記載によれば、七色の木はカエデ ネズミモチ トリモチ ヒムロ ツバキ グミ カズラ ギボシ シノブ 竜ノヒゲ 石コクとあります。 平成19年から平成21年までの調査では、次のような結果となり、時代とともに変化しています。

<樹上の植物>  下線の植物は樹木
エノキ キヅタ(冬づた) ネズミモチ ヤマモミジ アオネカズラ カタヒバ マメヅタ サイゴクイワギボウシ
ヒメウズ  カンスゲ

<根回りの植物> 下線の植物は樹木
カヤ
 ヤブツバキ ナワシログミ オオアリドオシ ツクシタニギキョウ ヤマネコノメソウ ウバユリ クリハラン
コバノボタンズル ナガノジャノヒゲ ヤマジノホトトギス ハカタシダ ハナミョウガ ヒメウワバミソウ など






マタタビ(マタタビ科 つる性)
 谷川沿いや林道の斜面に他の樹木に混じって生育している植物です。
写真は、岩屋入り口の赤橋近くに大きな群生をつくっているマタタビです。白い大きな斑入りの葉があるこ とから、遠くからでも確認できます。

6〜7月に白い花が咲き、秋には黄色い実ができ、また、虫えい(アブラムシ・ハチなどの昆虫が寄生してできる虫こぶ)ができます。
薬草(強壮薬・神経痛・腰痛・冷え症)・果実酒・猫の好物  

虫えい
 
 斑入りの葉
 
果実





   
カラマツ 唐松(マツ科 落葉高木 日本特産)約20.2m
 本州に生育するカラマツが、なぜ九州のこの岩屋に2本、大木に成長し生育しているのか?それは一つのなぞになっています。
歴史上の人物、石田三成がこの地に植えたという言い伝えがありますが、確証はありません。

自生ではなく、人の手によって植えられた可能性は大きいと考えています。 火山性のやせた土地に生えるので岩屋に生育できたのでしょう。紅葉は美しく,北原白秋は「からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き・・・」と詠っています。
建築材・合板・器具・パルプ
 






スギ(スギ科 常緑高木 日本特産)
 スギの根元にたって見上げると、大きな枝がいくつも張っていて荘厳な雰囲気を強く感じます。
大イチョウにも劣らない立派な大樹です。建築材・家具・器具






ネズ ねずみさし(ヒノキ科) 
 大小の岩崖の頂上や頂上付近に点在して生育しています。別名の「ねずみさし」は、葉が針状で触ると痛いのでネズミ除けにしたことが由来です。

 成長は遅く、材は緻密で年輪幅が小さく、針葉樹の中では最も重い幹比重です。材は良質 床柱 彫刻材

 
果実






ムクロジ(ムクロジ科 落葉高木)
 この木はなぜか神社に植えられていることが多いようですがその理由は不明です。

 秋に実る果実の皮にはサポニンが含まれ石けんの代用にされていました。

 中の黒い種子は羽付の球に使われています。庭木 器具材 
 






ヤマザクラ 山桜(バラ科 落葉高木)
 岩屋入り口の赤橋から直ぐ近く、道路右の林から道を覆うようにして、春になると満開の花で来訪者を歓迎します。ヤマザクラは日本の野生サクラの代表で、昔から人々に親しまれてきました。

 人々の生活域にあるヤマザクラの中では最も高い樹齢です。

 浅間山や大日ケ岳にも大木に成長したヤマザクラを見ることができます。同じ地域でも個体の変異が多いのが特徴で、花の色の濃淡と新芽の色、開花の時期や樹の形などは様々です。日本の野生の桜の代表的な種で、サクラの仲間では寿命が長く大木になります。






イスノキ ひょんのき (マンサク科 常緑高木)
 岩屋で遊んだ昔の子どもたちにとっては、とても懐かしい木です。

 それは、「さる笛」がこの木にできるからで、これを口で吹くとひょう、ひょうと猿の鳴き声に似た音が出るので、それを楽しんで遊んでいました。その音を真似てイスノキのことをヒョンノキなどとも呼んでいます。

 このように、イスノキを特徴付けているのは、何と言っても葉や枝にできる特有の形をした虫えい(虫こぶ)です。アブラムシの一種が葉や枝の組織の中に寄生し、その刺激を受けて組織が異常に発達してコブのようになります。イスノキは必ずといっていいほど虫えいができるので、この虫えいだけを手がかりにイスノキだと同定できるほどです。

 4月頃、芽吹いた新しい葉にアブラムシが寄生すると小さな虫こぶができます。
虫こぶはアブラムシが繁殖するにつれ大きくなっていきます。そして中のアブラムシは10月頃穴を開けて出てしまいます。このアブラ厶シが出た跡に小さな穴が残りそれを利用して笛にして遊んでいたのです。

 虫こぶは大小さまざま、虫こぶの穴も大きさを慎重に自由に変えていろんな音色を楽しんでいました。「さる笛」は、当時の子ども達にきっといろんな知恵を授けていたことでしょう。
  
虫えい(虫こぶ)






サツキ(ツツジ科)
 岩肌に点在して自生しています。他のツツジよりも一月ほど送れて咲きますが、目立つような美しさはありません。
控えめな淡い美しさに惹かれます。


 岩屋は、自然科学の学術的価値の高い場所であり、信仰の場所であり、歴史や自然を散策する場所であり、子どもたちや家族の遊びの場所であり、人々の交わりの場所として貴重な価値をもっている実に素晴らしい空間です。

 岩屋は「宝珠山村全体の自然が凝縮された象徴的な自然環境となっています。」と冒頭でも記述べています。いくつもの岩山で形成された特色のある植物相の自然をこれからも保存し、保全していくことが、動物の中でも最も種類の多い昆虫をはじめ、様々な小動物にとっても豊かな生育環境となります。

 太古の時代から受け継がれてきた岩屋の神秘的な自然は、この地に生きる人々、或いは、四季折々に他の地から訪れる人々の心の財産として、子孫に受け継がれていくことでしょう。   (次回につづく) 

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