第三節 生態系『ため池』の動物

 ため池は、土木機械も発達していない、遠い昔の人達によって造成された。以来、人々の命を繋ぐ大切な役割を果たしてきた。同時に、止水域を好む水生動物の命を繋ぎ、さらに、池周辺に集まってくる様々な陸生動物の命を繋ぐ役割も担ってきた。その過程で、人は、農薬や産業排水、生活排水で川や水田を汚染し、水生の動物が生きていけない危機的状況をつくった。このとき、ため池の重要性はさらに増した。ため池は動植物に危害を与えない水が多く、汚染物質が流入しても大量の水で希釈されるので、多くの生き物の命を守ることができた。

味噌池(畑嶋)
 今や、圃場整備や河川工事、様々な土地開発によって、野生動物が生きていける場所の極限化が進行している状況の中、ため池は、生物多様性を保全するために、さらに貴重な生態系となっている。


一 本町のため池について

 現在、筑前町のため池は七六か所(平成二十六年現在)である。筑前町のため池台帳では、六八か所となっているが、台帳に記載されていない私有のため池が八か所ある。これらの造成期は、昭和時代に一二か所、大正時代に一か所、明治時代に二か所、不明一一か所、残りの四九か所が江戸時代以前となっている。水稲耕作が弥生時代初頭に始まっているので、江戸時代前に造成されたため池もあると考えられる。
 ため池に水が導入されると、その水と共にはいってきた動植物と池周辺の動植物による食物連鎖で、池を中心とした生態系が形成されてきた。
 ため池は、[谷池]と[皿池]に分けられ、その中間的なため池もある。谷池と皿池とは、水質と池周囲の植物環境に違いがあるので、動物の種数・個体数が異なっている。

谷 池
 山間の谷川を堰き止めて造成している。典型的な谷池の例をいくつか挙げると、牧ノ池・黒岩池・金山池・城ノ尾池などである。

* 皿池と比較して、池面積に対して水深が深い。
* 谷川の水を溜めるので、水温と栄養価は比較的低い。そのため、水生動物の種数・個体数は、皿池に比べて少ない。
* 農薬・生活排水・産業排水は極めて少ない。但し、例外はある。
* 森との連続した位置にあり、池の周辺には樹木が多く残されていて、自然の景観で潤っている。
* 入水口付近の岸辺は、イノシシのぬた場・餌場になっているのを多く見かける。

谷池(金山池)

皿 池
 土を盛り上げた堤防で囲み造成されている。国道三八六号線を挟んで、両側の平野部に多い。典型的なものとしては、上高場の四池・味噌池・政田池・細牟田旧池・細牟田新池などがある。

* 谷池と比較して、池面積に対して水深が浅い。
* ため池の周囲は、水田に囲まれているものが多い。
* 水は川や他のため池から、水路を通して貯えられる。
* 水温が比較的高いので、植物相も豊かで、水は栄養価に富んでいる。そのため、動物の種数・個体数は、谷池に比べると多い。

皿池(上高場の4池:東池、中池、西池、整理池)
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