五 紹介しておきたい動物

◆モクズガニ 藻屑蟹(やまたろがに)
 甲幅は七〜八cm(イワガニ科) サワガニと同じで、一時期姿を消していたが、現在は年々多くなってきている。モクズガニは、柿の葉が色付いてくると、海へ向かって下り始め、特に新月の夜に多く下る。昔は、カニ筌で一度に三〇匹ほどは優に取れていた。しかし、川の環境は護岸工事や井堰の構造の変化、竹藪の下など深くえぐられた場所や穴も無くなり、遡上や生活する条件が厳しくなっている。(※カニの数え方…生きているときは匹、料理等で出される状態など死んでいるときは杯で数える。)

モクズガニの♂と♀
◆サワガニ 甲幅二〜三cm(サワガニ科)
 依井奈良付近の草場川では、水質汚染で長らく姿を消していたが、最近見かけるようになっている。ヨコエビ・カゲロウ・トビケラ・トンボの幼生など、様々な底生小動物が生活しているので、それらを餌として生きている。谷川から遠く離れた三並の杉林の中で、サワガニを確認して驚かされた。サワガニは川の中だけで生活しているのではなく、森の中でも生活していることが分かった。林の中には落ち葉や腐葉土が多く、ヤスデ・ミミズ・トビムシ・ワラジムシ・コオロギ類の幼生・チョウやガの幼虫など、餌となる陸生の小動物が多くいるからである。
 三箇山の年配の方の話では、昔は雨上がりには道路にまで這い出してきたサワガニを、バケツと金バサミを持って沢山取っていた。当時は山麓に近い所も同じような情景があった。

サワガニ(三箇山三並川)
◆ミヤマカワトンボ(カワトンボ科)
 清流に住む橙色系のきれいなトンボである。本町では曽根田川の親水公園の中の、流れの緩やかな場所で多く見られる。川の水面から出た石や川岸の石によく止まる。川の中の倒木や倒竹を伝って水中に潜り、行き着いたところで産卵を行う。

ミヤマカワトンボ(親水公園)
◆カワガラス 全長二二cm(カワガラス科)留鳥
 川の上流部の渓流で生活し、三箇山川と櫛木川との合流付近で確認できた。カラスの仲間ではない。一日中、生活範囲の川を上下しながら、水中に潜り水生昆虫や小型の魚を捕食している。巣は櫛木内にある井堰排水口の中に作られている。水面を飛翔するときは、ジョッジョッと大きな声で鳴くので、確認しやすい鳥である。他の川では、注視していたにもかかわらず確認できなかった。

カワガラス(櫛木川)
◆コチドリ 全長一六cm(チドリ科)夏鳥
 草場川の河原の石ころの多い砂礫の地面に営巣するが、餌は魚ではなく、極端に浅い場所の水生昆虫や川周辺の草地の昆虫類である。礫や砂地がある場所とその周囲を観察すれば、コチドリを確認できることが多い。背面は褐色で過眼線と首の太い線が非常に目立ち分かりやすい。

コチドリ(草場川)
◆ヤマセミ 全長三八cm(カワセミ科)
 カワガラスと同じく山中の渓流で生活する野鳥である。今回の調査期間には確認できなかったが、 以前、三並川にハヤ(オイカワ)の養殖場が在った頃はよく見かけていた。カワセミ科の中では最も大きく、ハトぐらいの大きさと考えてよい。羽はサザナミ鳥に似ている。ため池などにも出現するのでよく注意してほしい野鳥である。
◆ハシボソガラス 全長五〇cm・ハシブトガラス 全長五七cm(カラス科)
 人の入浴の様子で「カラスの行水」の例えがあるが、カラスは全ての生態系で生活しているにも拘わらず、その行水を見ることは珍しい。しかし、草場川にかかる城山橋と田屋橋との間の浅瀬では、橋から容易に観察できる。一〇〇羽近い群れが、樹木や堤防から代わる代わる浅瀬に降りて行水をしている。

カラスの行水(ハシブトガラス)
◆ニホンイシガメ(イシガメ科)【絶U】
 近年減少している種である。福岡県では、水質悪化で減少し、絶滅危惧U類に指定されている。ため池に生息している可能性はある。雑食性で、魚・甲殻類・両生類・貝類・水草・動物の死骸・野菜や果物などを食べる。

ニホンイシガメ(四三嶋)
◆カジカガエル (アオガエル科)【準絶】《確認できず》
 清涼感のある高い鳴き声で、生息状況が分かるカエルである。町内全ての川で確認することができなかった。魚のカジカが生息している清流の環境があるので、生息可能なはずだが不思議である。敢えてここに掲載した。

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