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第七節 各種生態系に訪れる動物

 川・ため池・水田・草原・森林など、複数の生態系を繰り返し訪れる動物がいる。その動物は、主として哺乳類や鳥類に見られる。一部の水生昆虫は、水の有無で水に関わる生態系を移動する。いずれにしても、主な理由は餌の確保と休息のためである。また、前述の五つの生態系が狭い範囲で密集していれば、当然ながら、動物の種類はより多くなる。ここでは、イタチ、トビ、サギ類、コガタノゲンゴロウの例で述べる。


◆イタチ類(イタチ科)【準絶】
 林道、車道、農道を横切るイタチを良く見かける。前記の生態系を移動するためである。また、民家も生活場所の一つとなっている。

 食性は肉食性で、ウサギ・ニワトリ・野鳥・ネズミ・ヘビ・カエル・昆虫などの陸上動物と、ザリガニ・魚などの水生動物を捕食する。特に、山麓線の両側は、木に囲まれているため池も多く、その近くには田畑や川があり、イタチにとって生活しやすい場所となっている。

 イタチには、ニホンイタチとチョウセンイタチの二種類が生息している。その区別は、@体毛色は、ニホンイタチは濃い褐色で、チョウセンイタチは黄赤褐色で明るい。A尾の長さは、ニホンイタチは体長の半分より短く、チョウセンイタチは体長の半分を超える。


◆トビ(タカ科)
 空から、獲物を探すトビの行動範囲は広い。天気の良い日に、水田と川・水田と丘陵地・水田とため池など、水田と他の生態系の接点の場所ではトビを見る確率は高い。電柱や標識の先端、ハウスの屋根などで休んでいるのをよく見かける。食性は動物の屍肉・生きたヘビ・カエル・小鳥・ネズミ・魚などで、上空を旋回しながら探す。

電柱にトビ(東小田下区)
 平成二十五年十月に、珍しく六羽で、仙道上池や仙道古墳公園上空を旋回しながら、獲物を探し ているのに遭遇した。


◆サギ類(サギ科)
 田によく訪れるサギ類には、留鳥のコサギ・ダイサギ・アオサギ、夏鳥のチュウサギ・アマサギの五種類がいる。普段は水路、ため池、川で餌を獲っている。田植え以降の水田にもよく来ている。麦や米の刈り取りや耕起が行われると、トラクターやコンバインのあとを追い、飛び出してきた小動物を啄んでいく。今やこの情景は、初夏と秋における田んぼの風物詩となっている。

深沼旧池・深沼新池の西側水田
 子育てや休息に森の樹木や竹林を利用する。東小田にある平成カントリー南側の竹林は、サギ類の塒(ねぐら)となっている。平成二十五年九月二十五日に、利用しているサギ類の数の調査を行った。カントリー側からのみの計測であるため、正確な数値ではない。朝五時四十七分に第一陣の七羽が飛び立ち、四六分後までに二七三羽が飛び立った。同日、午後五時五十分から六時五十五分前までに、二六一羽が戻ってきた。


◆コガタノゲンゴロウ(ゲンゴロウ科)【絶U】

 体長三cmの水生昆虫である。ため池・水田・川・水路で生活し、魚や水中に落ちてくる昆虫類やミミズなど食べる。食べると言っても、口の管から麻酔液と消化液を注入して溶かした肉を吸い取る。獲物や水が無くなると、空中を飛翔して他の水域へ移動する。福岡県指定の絶滅危惧U類であるが、本町では水の生態系の至る所に多く生息している。

 川や池から遠く離れている依井の人家で、飼育している金魚の水槽にも住みついていた。絶えず空間を移動していることがよく分かる。

コガタノゲンゴロウ(民家の戸外の水槽にも)


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