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第六節 生態系『森林』の動物

 筑前町の森林は、人工林と自然林で構成されている。人工林は、スギとヒノキが主体である。自然林は、かつて薪や木炭の生産・シイタケ栽培など、人々の生活を支えてきたコナラ・クヌギ・シイ・カシなどが残されている二次林である。

 主に森林を拠点にしながら生活を営んでいる動物には、シカ・イノシシ・キツネ・タヌキ・アナグマなどの哺乳類がいる。また、イタチ・ネズミ・ヘビ・トカゲなどは、森林周辺の雑木や竹などでできた小さな藪も利用している。鳥類は、巣をつくり子育ての場所にしているものも多く、カエル類にとっても重要な生活場所である。昆虫・貝類などの無脊椎動物も命を繋ぐ場所としている。

 近年は、大型の哺乳類の増加が目立ち、樹木や農産物への被害も年々増している状況となっている。


一 幻想の世界「ヒメボタル」の発光

 ヒメボタルは、川には全く関係なくスギ林や竹林、雑木林に生息している。この蛍を、栗田釜寺のスギ林の中で確認した。♂の体長が六_と非常に小さいホタルである。日が暮れてくると、〇・五秒に一回の短い間隔で、チカチカチカ…と黄金色に近い光の点滅を放ちながら飛翔する。さらに時間が経過し午後九時前後になると、それぞれに飛翔し点滅していたものが、全部一斉に閃光を放ち、まるでクリスマスのイルミネーションのような幻想の世界を生みだす。

ヒメボタル(体長6mm)
 それほど美しい光を放つヒメボタルが、人々にあまり知られていない理由は、夜になると、人が行くことも無い場所だからである。家のすぐ近くの林に生息していても、人々が気が付かない存在でもある。このヒメボタルの♀は、羽が退化しているため飛翔できず、草の高い位置の葉先に止まって、地味な光を発光して♂を呼び寄せている。幼虫の餌は、ゲンジボタルやヘイケボタルと違い、陸上に住む小型の貝類である。本町内の全域で林道沿いや丘陵地の林をくまなく探索したが、発見できたのは、サンポート周辺のスギ林と、山麓線栗田から目配山への車道に入って、間もなくの林の二か所であった。いずれも、小さな子どもでも安心して観察できる 場所である。

ヒメボタルの発光(栗田)


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