■筑前町の自然 TOP■
五 稲作の作業と動物

 田植えが終わり、稲が育つ七月の水田には、驚くほど生き物は少ない。以前はびっしりと居たミジンコ類も目立たない。前記の生きた化石三種のほかは、ヌマガエルとそのオタマジャクシ・ハイイロゲンゴロウ・ミズスマシ・非常に小さなハエ類・アオモンイトトンボ・クモ類・スクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)ぐらいである。これらの生き物を探して歩くコサギ・ダイサギ・アオサギと、夏鳥として渡ってきたチュウサギ・アマサギが集まってくる。

 八月初めの水田の中干し期は、水の底は土ばかりが目立ち、乾田の土は瓦のように見え、コケや草は生えていない。そのため虫類も見当たらない。才の木集落南側の水田で、大きな補虫網を使って、稲の葉を幾度もなでていったが皆無であった。向むかいばる原池すぐ傍(かたわ)らの北側水田では、クモ類・ガ類・イトトンボ・小さな甲虫を捕獲したが、各種一〜二頭とわずかである。

 町内では、九月中旬から十月下旬にかけて、稲刈りが行われる。稲刈り中のコンバインの後に、サギ類やカラスがついて回り、飛び出してくるカエルや昆虫類やクモ類を啄んでいる。コンバインの後ろについて観察していくと、ヌマガエル・アマガエル・エンマコオロギ・ケラ・ウンカ・クモ類などが出てくるが、ウンカを除いて個体数は意外に少ない。山麓の林傍(そば)の田では、生き物の個体数が平野部に比べると非常に多くなる。山間部では、コンバインを使い始めた頃は、刈り終わる最後に残っている中央部分の稲の中から、同時ではないがノウサギやイタチ、タヌキ、ヘビなどが飛び出して来た。

コンバインとサギ類(高田)
 六月、十〜十一月、トラクターでの田起こしでも、麦刈や稲刈り時と同じように、餌を求めてサギやカラスが多く集まってくる。
◆次ページ◆