■筑前町の自然 TOP■
四 紹介しておきたい動物

鳥 類

 町内のため池を巡ると、カワセミ・カイツブリ・カワウ・アオサギ・ダイサギ・コサギ・ゴイサギ・ミサゴは、年間を通してよく見かけ、ため池の常連である。ヨシが生えているため池では、バンやカルガモを良く見かける。

◆カワセミ(カワセミ科)
 背は、鮮やかなメタリックに輝く青色で美しく、空飛ぶ宝石と呼ばれている。多くのため池に生息し観察もし易い。川はもちろん水路など、魚・カエル・水生昆虫・エビなどがいるところには姿を現している。カワセミの特徴的な鳴き声を記憶しておけば、目を逸らしていてもその存在を知ることができる。ただ、静止している時は鳴かずに、魚を狙っているか羽づくろいをしている。

カワセミ(松延池)
◆カイツブリ(カイツブリ科)
 ため池にいつ行っても見ることのできる鳥である。休むことなく頻繁に水中に潜り、小魚や水生昆虫、スジエビ、ザリガニなどを採餌している。五〜六月ヒナを育てるが、カラスに襲われるのを時たま見かける。三箇山と櫛木では姿を見かけなかった。

◆カワウ(ウ科)
 多くのため池で見かける。松延池・牧ノ池・深沼新池・上高場四池では、五羽以上の群れを見ることが多い。最も多い群れは、平成二十二年十二月初旬の牧ノ池の二一羽であった。

カワウ(松延池)
◆バン(クイナ科)
 水草を好んで食べ、隠れ場所となるヨシやガマ等の水生植物が生育しているため池では、必ずと言っていいほど見かける。

バン(松延池)
◆オオバン(クイナ科)
 バンよりも大きく白い額板がよく目立つ。冬期、多くのため池で見られるが、松延池には特に多く観察もし易い。

オオバン(松延池)
◆クロツラヘラサギ(トキ科)【絶T】
 二〇一五年一月現在、世界で三二五九羽しかいない。世界的にも貴重な鳥で、冬季に日本に渡って来る。同じ絶滅危惧T類のヘラサギと共に、水が減少した松延池や上高場四池、深沼新池に数羽で訪れている。冬鳥であるが、平成二十六年六月十五日、山隈在住の東山善一氏が、下堤近くの耕起が行われた田に飛来しているのを見かけている。

クロツラヘラサギ(左2羽)とヘラサギ(上高場東池)

両生類

◆ウシガエル(アカガエル科)
 ヨシやガマの生えているため池には必ず生息している。ため池に、食用ガエルが生息しているかどうかの確認は鳴き声で分かるが、呼吸のために池の水面へ浮かび上がってくる大きなオタマジャクシでも確認できる。ため池下の水路で、幼体のウシガエルを多く見かけるところもある。

ウシガエル(味噌堤)
◆トノサマガエル(アカガエル科)【絶T】
 平野部の水田から姿を消して久しい。現在は、山間・山麓の水田で見かける。国立夜須高原青少年自然の家のビオトープの池(岩坪池)、曽根田坂根の防火用水プールでは、繁殖期に容易に見かける。

トノサマガエル♂(ビオトープの池:岩坪池)


トノサマガエル♀(坂根)
◆ヌマガエル(アカガエル科)
 十月大群を見かける。ため池のほか、水田や水路、川などに広く分布し、もっとも個体数の多いカエルである。

◆アカハライモリ(イモリ科)【準絶】
 三箇山の山中池や内越池では、のどかに泳いでいる姿を観察できる(水田の生態系で詳細を記載)。多くの池で見られるのが、コイ・フナ・ナマズである。深沼新池は牟田川を拡張して造成している比較的浅い皿池である。そのため、川に多いスナドジョウ・オイカワ・カワムツ・ドンコ・ヨシノボリが生息している。また、筑前町には生息していなかった魚のハスも見つかった。


魚 類

◆メダカ 四cm(メダカ科)【準絶】
柳迫池で、小さな角ばった黒い斑点が幾つもある、珍しいメダカを発見した。黒い斑点が付いている位置や形、大きさはいずれも個体によってまちまちである。中島淳氏(県保健環境研究所 環境生物科)によると、淡水魚に寄生する吸虫により生じたもので、メダカでは珍しいとのこと。池のそばの道路から水面を見降ろすと、水面で泳ぐ群れが、大型自動車が走る振動の刺激で、一斉に水中に潜る様子が観られる。

メダカ(柳迫池)
◆タモロコ(たばや) 八cm(モロコ属)
 タモロコは生育環境によって、体形が異なるので同定が難しい。多くのため池に生息する。毎年秋に親を捕獲し、再び同池に放流され育てられている。秋の味覚としてスジエビと一緒にした甘露煮が好まれている。

◆ハス 二五cm(ダニオ亜科)【絶U】
 江川ダムに繁殖しているハスが深沼旧池・新池に生息していた。一見オイカワ(最大一五cmに成長)によく似ているが、今回、採取したハスは一八・五cmだった。江川ダムからの配水があり、その経路で繁殖したものではないか。旧池の池干しのとき、東小田小学校の水田東側の小水路に、モツゴに混じってハスの幼魚が数多く排出されている。
 * 琵琶湖原産で、九州・中国地方・関東等の河川やダムに移殖されたものである。

ハス(深沼新・旧池)
◆ オオクチバス(ブラックバス)六〇cm(サンフィッシュ科)
 釣りの楽しみのため許可なく放流されている。日本固有の魚・両生類・小型の哺乳類などを食い荒らし、ため池や川の生態系を狂わせている。駆除対象の魚である。また、釣りの醍醐味もあり、釣りに夢中になる子ども達に、池の管理者は事故が起きないかと大変気を使っている。

◆ブルーギル 二五cm(サンフィッシュ科)
 ため池に違法放流されている。オオクチバスと同じで、駆除対象となっている。三〇年ほど前に、寺内ダムで釣ったものを醤油煮で食したことがあるが、フナと同じように美味しく感じた。


昆虫類

◆コガタノゲンゴロウ(ゲンゴロウ科) 体長三cm【絶U】
ヒシが繁茂している柳迫池には、大繁殖をしている。手作りの採集器の一個に七頭も捕獲できたほどである。調査期間に初めて捕獲したのは、草場川上流の奈良であった。水田や水路、金魚を飼育している大型水槽でも確認でき、水の生態系を行き来していることが分かった。福岡県では絶滅危惧U類となっているが、本町では繁殖がすさまじい。

コガタノゲンゴロウ(全長3p 柳迫池)
 ※ 以前、普通に居たゲンゴロウ(体長三・五〜四・五cm)は、福岡県では半世紀以上確認されておらず、絶滅危惧T類となっている。今回の調査では、残念ながら発見に至らなかった。

 ※ ゲンゴロウとコガタノゲンゴロウの違いは、腹面の色を見ると識別しやすい。前者は淡褐色で後者は黒紫色をしている。前者♀のみ背面にしわが有る。

◆チョウトンボ(トンボ科)
 名前の由来は、他種のトンボと比べ後翅の幅が広く、飛翔する様子が蝶に似ているため。太陽光線が翅に当たると、角度によって様々なメタリック色に変化して美しい。茶ちゃやばる屋原池・身延東と西池・才ノ木東と西池・細牟田旧池・上高場東池・笠堤で確認した。希少種となる傾向にあり、絶滅危惧種に指定している県もある。本種は「飛行機トンボ」とも呼ばれているが、早朝と午後に樹木の梢(こずえ)付近を群れで飛翔する習性があり、その飛翔の様子が、飛行機に似ているからである。個体数が最も多かったのは、細牟田旧池である。この皿型の池では、ヨシやガマが繁茂していて、幼虫期のヤゴはコイなどの天敵から身を守ることができる。周囲には樹木が茂り餌も多く、各種のトンボが生息し、トンボ公園(仮称)として最適の環境となっている。

チョウトンボ(細牟田旧池)
◆コシアキトンボ
(トンボ科) 多くのため池に生息している。チョウトンボと同じように、樹梢で群舞する習性を持っている。普通は単独で岸辺を行き来しているが、池から遠く離れた農道や森の樹上で群舞する習性がある。 二(フタ)の宝満宮境内の上空でその群舞が見られる。

◆その他のトンボ
 ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、ウスバキ、トンボ、ヤンマ類、イトトンボ類、カワトンボ類

◆スジエビ(テナガエビ科)
 水路や川にも生息している。食性は、動物性が主で、魚や貝、水生昆虫のほか、藻類や水草である。透明で跳ねる力が強く、元気が良い。多くのため池に生息し、料理の嗜好品として好まれている。

◆テナガエビ(テナガエビ科)
 深沼新池の池干しのときに見つけやすい。食性はスジエビと同じである。

◆ミナミヌマエビ(ヌマエビ科)
 深沼旧池のように、水草の多いため池にはほとんど生息している。食性は、藻類や小動物の死骸などであ る。現在は、川や水路にも多くなっている。

◆アメリカザリガニ(アメリカザリガニ科)
 茶屋原池(三角池)の魚類を調査するため四個の網筌を仕掛けたところ、なんと、五〇匹近いザリガニが入った。現在は、ザリガニを見かけなくなったとの一般の情報であるが、他の浅い皿型のため池にも多く生息しているのではないか。

アメリカザリガニ(茶屋原池)

貝 類

◆ヌマガイ(ごつ貝)(イシガイ科)
 ため池で確認されるものには殻長一〇cmを超えるものがあり、ため池で繁殖して命を繋いでいることが分かる。ヌマガイの復活は、ヌマガイに卵を生みつけ繁殖するタナゴ類の復活にも繋がる。現在は、川でも増殖を始めている。

ヌマガイ(細牟田旧池:14.5p)
◆マルタニシ・ヒメタニシ(タニシ科)

ヒメタニシ(左:熊坂池) マルタニシ(右:田代池)
 水田から消えて久しいタニシは、多くのため池で命を繋いでいることが確認された。減水した岸辺や、池干しが行われた時が調査に適している。マルタニシは、上高場の四ため池・山中池・深沼旧池・釜寺池・熊坂池・大神池・笠堤・中堤(中ノ堤)・下溜池・政田池・細牟田旧池・味噌池・柳迫池・炭焼池・向原池・田代池・政田池・松延池・西原池などで確認、ヒメタニシは、釜寺池・熊坂池・炭焼池で確認された。他のため池は未調査である。

 福岡県にはオオタニシ、マルタニシ、ヒメタニシの三種が生息している。筑前町ではマルタニシとヒメタニシの二種を確認できた。調査を行った全てのため池にマルタニシが生息し、ヒメタニシは釜寺池と熊坂池、炭焼池で多く確認している。ため池のタニシはよく成長しており、大きいものでマルタニシの殻高が五八_、ヒメタニシの殻高が四二_であった。聞き取り調査から推定すると、以前水田に生息していたマルタニシは、殻高が四〇_以内の大きさと推定している。

 * ため池でも観られる外来種のスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)は、リンゴガイ科でタニシの仲間ではない。寒さに弱い。
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