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第二章 筑前町の動物

第一節 動物の生活環境

一 地理的環境


 本町は、山地・山麓・丘陵・平野・孤山・川などの地理的環境によって、規模の大きい里山の風情を醸し出している。
 国道三八六号線の北側には、山や丘陵地があり、水田がそれらの麓から国道に向かって傾斜をしながら広がっている。その中を、有史以前から流れる曽根田川をはじめとする数本の川と、開田に伴う数多くの水路が国道を横切りながら南西に走る。また、赤坂から弥永にかけての山麓を横切り、主要地方道筑紫野三輪線(以後は、山麓線と表記)が通る。国道の南側は、孤山の城山を頂にした丘陵地帯から見て、概ね東側〜北西側の角度の中に水田が広がっている。その中を、草場川が東方から西方に向かって流れる。
 そして、筑前町全域には、稲作に大きな役割を歴史的に担ってきた七六か所の「ため池」が、満遍なく点在している。
 動物たちは、これらのいずれかの環境から自分に適した環境を選び、命を繋いで生きている。本町には、人の手が加わっていない自然環境は皆無である。各種の動物は、人々が営む生活様式の変化に左右されながらも、その変化に適応して生きている。

二 筑前町における生態系

 本町の動物を観る場合は、生物の生活環境を表す生態系を基準に置くと分かりやすい。生態系とは、『生物群集(植物・動物・微生物など)と無機的環境(土壌・水・空気など)とが相互に関係し合い、生命(エネルギー)の循環をつくりだしているシステムとその空間』のことである。
 本町の生態系は、「川の生態系」「ため池の生態系」「水田の生態系」「水路の生態系」「草原の生態系」「森林の生態系」の六つに大別できる。各生態系にはその生態系特有の動物が生息し、食物連鎖を形成している。
また、哺乳類・鳥類・昆虫類の一部には、食べ物や休息場所を求めて各種の生態系を行き来しているものがいるが、その行動の範囲は広い。
 ここで特筆しておきたいことは、筑前町の「ため池の生態系」が学術的・景観的な文化的価値が秀でていることである。
 その理由は、大小様々な規模のため池が山地から平野部に存在しているため、命を繋いでいる動物が多様であること、しかも、その動植物を観察しやすいため池が多いこと、ため池の景観も人々を和ませるものが多いことである。



目配山から筑前町の山地・山麓・丘陵・平野・孤山を望む



城山の山道から丘陵・平野・目配山〜砥上岳間の山麓と山地を望む



ため池のオシドリ(笠堤)



ため池の生態系(牧ノ池)



川の生態系(草場川)



水路の生態系(高田)



水田の生態系(三箇山・櫛木)



森林の生態系(山隈)



草原の生態系(三箇山)




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